英雄の天意~枝葉末節の理~
 そんなものが、どうしてこんな所に突き立てられていたのだろうか。

 先ほどの野盗たちがまず目を付けそうなものなのに。

 ふとして刃に刻まれた古代文字を目にした刹那、言い表せぬ衝撃が体中を激しく巡り、それに驚いて片膝をついた。

「──今のは?」

 痛みはなかったが何かにつなぎ止められたという意識を心の奥底に感じ、剣から心臓の鼓動のごとき脈動が伝わり思わず手を離す。

 それ以来、剣はどんなに手放しても必ずナシェリオの元に戻ってくるようになった。

それを呪いの剣と言わずしてなんとする。

 それからしばらくして、あの丘は「呪いの丘」と呼ばれ、この剣はどんな屈強な者でも抜く事が出来ない不思議な剣だったという事を知った。

 剣が抜かれたという話は瞬く間に広まり、それは「英雄の剣シュロタスタル」としてナシェリオと共に歩む事となったのだ──







*エピック【epic】:叙事詩。史詩。
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