英雄の天意~枝葉末節の理~
 彼らのためにも私は誠実でいなければならない。

 二人が教えた優しくない世界は、誰をも憎まずにいられる術を説いたものだと、ナシェリオはそう考えていた。

 それからしばらくして、同い年のラーファンがうちに尋ねてくるようになった。

 初めは孤独になったナシェリオのためにと、彼の両親がラーファンを寄こしていたのだろう。

 次第に二人はうち解けあい、成人してからも仲良くしていた。

「じゃあまたな」

 野菜を届けに来たラーファンは、ナシェリオの仕事の邪魔はしないようにと家族から言いつけられているのか、やや不満げに帰ってゆく。

 その背中を見送ったナシェリオはどうにも仕事をする気にはなれず溜息を重ねた。

 どう話そうとも、きっとラーファンには通じない。

 彼の視点は常に自分を中心としているのだ、他人からの視点など想像は出来ないのだろう。
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