英雄の天意~枝葉末節の理~
 わだかまりを抱いた心のままでは細かい作業をこなす事は難しい。

 幾度めかの溜息を吐いたあと裏口に向かい、庭に立てかけている練習用の剣を手にした。

 刃もなく質素なそれは、練習用であるには充分な重さと長さがあればいい。

 裏庭には彫刻や細工に使う木材が囲いに沿っていくつか積まれており、料理に使用するハーブも何種類か植えられている。

 ナシェリオは静かに目を閉じ、ゆっくりと呼吸を整えてゆく。

 剣の重さと周囲の大気を確認したあと、目を見開いて剣を振り下ろす。

 それは切るような鋭さもなく、風のような素早さもない。

 しかしその動きは留まる事なく展開され、流れるように振る舞われる姿はまるで踊っているかのごとく優雅に美しい。
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