英雄の天意~枝葉末節の理~
「もういいですか」

「ここはいい所だな」

 急かしたはずなのにそれをいともあっさりといなして話を振った。

「辺境だと思って甘く見ていた」

 よそ者はそういう認識なのだろう。

 辺境には何もなく、殺伐とした風景が続くだけだと大半の者は思っている。

 しかし実際には、果てしなく広がる草原と遠方に見える山脈が見事な風景を作りだしている。

 巨大な樹木や森が見あたらないというだけで、雑木林は点在していた。

 他の土地よりも殺風景とも言えるが、そんなふとした話が大きく伝わってしまったのかもしれない。

「どうやら俺はあんたに嫌われているらしい」

 先ほどからのナシェリオの態度に口角を吊り上げてパイプをふかす。

 改めて言われてしまうと緊張を拭えないのかナシェリオは視線を外した。
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