英雄の天意~枝葉末節の理~
「そうだな。竜退治には同行したことはある」

 何年前だったか、東の領主の子息が名を上げるためにドラゴンを退治するので手伝って欲しいとの要請だった。

 領主とは、その一帯を統制するように王都から使わされている一族の事だ。

 王都が建てられた頃から出来た決まりで、長く領主を務めている一族も少なくはない。

 もちろんのこと、領主たちを監視している訳ではないので好き放題を続けている者もいるのは事実だ。

「俺の他に荷物持ちを含めて十人ほどがいたかな。大変だったんだぜ。何せ、剣の持ち方から教えなきゃならなかったんだからな」

「それはもしや……」

「まあそんなものさ」

 領主の息子は遊びばかりに夢中で領民たちからはあまり好意的には見られていなかった。

 それでは自身がいよいよとなったとき、息子が跡を継ぐにあたり領民たちから反発が来かねない。

 大きな手柄を立てれば皆も納得するだろうという浅い考えからだった。
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