英雄の天意~枝葉末節の理~
 果たしてドラゴンは毒によって徐々にその動きを鈍らせ、いよいよ倒れ込んで動けなくなったと確認したのち道楽息子にとどめを刺せと促した。

「とりあえずは何かやっとかねえと帰っても示しが付かないだろ?」

 道楽息子がどうなろうと彼らにはどうでも良い事ではあったけれども、微量であっても手柄らしきものは立てさせなければ後々(のちのち)に面倒になるやもしれない。

 ここまでお膳立てしてやったのだから、最後くらいは手伝えと嫌がる男の頭をこづいてとどめを刺させた。

 もっとも、とどめなど刺さずともドラゴンはすぐに息絶えただろう。

 ただ、長く苦しめる事はしたくなかった。

 それだけだ。

「どんな命もこの世にある以上、敬われるべきものだ」

 ぼそりとつぶやいた言葉にナシェリオは目を眇めた。

 確かに彼は英雄ではないだろう。

 しかし、尊敬出来る人物である事は間違いなさそうだ。
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