歩んだ先の未来




食べ終わったところで

「そろそろ帰りますか。結構暗くなってきましたし。」


「そうだな、帰るか。」

勉強道具を鞄の中にしまって
店を出ることにした。



「家どっち?」

「こっちです。」

「あ、同じだ。じゃあ一緒に帰れるな。」

と笑顔で歩き出した。
意外と森谷くんと家が近かったりするのかな?






歩きながら

「ねえ、誕生日いつ?」

「え?誕生日ですか?9月12日ですけど。」

「ふーん。」

「なんですか?聞いといてその反応は何ですか。」

「いや、無言で歩いててもつまんないし、質問しようかと思って。」

「それなら、私からも何か質問しますね。」

「…。」

「…。」

「た、誕生日いつですか…。」

「俺と同じ質問ですか。5月5日。」

「こどもの日なんですか!なんかいいですね。」

「初めて言われた。」

「え、そうなんですか?自分の誕生日休みになるし良くないですか?」

「ふはっ。藍実面白すぎ。自分の誕生日あんまり好きじゃなかったけど、ちょっと好きになれそう。」



他にも、他愛のない話をしていると
いつの間にか自分の家の前に来てたいた。

「森谷くんの家この先ですか?」

「まあね。じゃあ、また明日。」

「はい、また明日。」


そう言って手を振った。

森谷くんが動こうとしないから
私はそのまま家の中へ入った。




1回入った家の玄関でどうしても
靴を脱ぐ気にはなれなかった。


もしかしたらと

再び外に出た。



私は森谷くんが歩いているだろう
先の道を見たんだ。

けど森谷くんはいなくて
私は堪らず歩いて来た道を見た。


見覚えのある後ろ姿。



「ああ。私はあなたの不思議な感じが、あなたの声が、あなたの優しさが好きだ。」


小さく呟くその声は
静寂へと吸い込まれた。


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