歩んだ先の未来
私の名前を知っていたことに驚きを
隠せなかった。
「私の名前も知っていたんですね。」
そう言うと急に森谷くんが
私の隣に座ってきた。
「瀬名ちゃんさ、俺のこと見に来てたでしょ。正確には“友達が”だと思うけど。」
私はこの時、やっぱりかと思ってしまった。
あの時、森谷くんと確かに目があった。
それに七穂を誘いに行ったりなんかする時も
隣のクラスに行って
癒音が森谷くんを見てるから
私も少し森谷くんを見たりすると
たまに目が合うことがあった。
最初はもちろん私の勘違いで
癒音は目が合ったかもと凄く喜んでいたし
自意識過剰な考えは捨てようと思っていた。
でも、明らかに森谷くんの目線は私だった。
「いつ、私の名前を知ったんですか?」
少し考えてから
「入学してすぐかな。瀬名ちゃん可愛かったから、教えてもらったんだよね。」
と陽気に話している。
森谷くんへの感情が面出そうになり
咄嗟に立ち上がった。
「私、もう授業戻ります。」
森谷くんの方を向かないで
立ち去ろうとした時だった。
「もうちょっといなよ。」
さっきとは違う
落ち着いた声でそう言われ
私はまた木陰へと腰を下ろしてしまった。
そして
「ん。いい子。」
と言われた。
それから森谷くんは何か喋るわけでもなく
ただ黙っていて、でも
それが私には心地よくて
森谷くんには私の心が
既に全部見透かされている
ような気がした。