歩んだ先の未来
静かな学校から外へと漏れる。
学校の中から微かに聞こえる
チャイムの音はこの和やかな
時間の終了も意味する。
「チャイム鳴ったので戻りますね。」
そう言って立ち上がると
「瀬名ちゃん、下の名前は?」
森谷くんの方を振り向き
「藍実です。」
すると森谷くんも立ち上がり
「藍実ね。覚えとく。次話すときは敬語じゃないと嬉しいな。」
そう言ったあとに
私の頭をポンっとしてから
私より先に教室へと戻っていった。
さらっと言われた名前と
不意に森谷くんに触られた頭は
自分でもわかるほど熱を持っていた。
それと同時に自分の顔も火照る。
私は教室に戻るなり
癒音に怒られた。
「藍実、どこ行ってたの。保健室行ったらいないし、教室にも戻ってきてなかったし。」
癒音の怒った顔に私は笑顔で
「木陰で休んでたんだ。」
と軽く説明したが、森谷くんに会ったことは
どうしても話せなかった。
「それなら最初っから言ってよね。」
とまた怒られたが
笑顔ではいはいと流していると
また怒られたので
今日1日はきっと怒られ続けそうだ
と悟った。
これは私の事を心配してくれてのこと。
嬉しさがこみ上げるが罪悪感にも苛まれる。
これがテスト前の
ある日の出来事だった。