続 音の生まれる場所(下)
「文面に訂正する所はありません。このままでいいです。…ただ、写真が…」
ペラ…と1枚目の原稿をめくる。
「これ…載せてもいいの?」
指差す箇所を覗く。
「…えっ⁉︎ ごれっで…あの時の…」
お礼を言われて涙が零れ落ちた時の写真。確かに1枚だけ、撮られた気がするけど…。
「僕は構わないよ。でも…君はいいの?」
単純に握手してるだけじゃない。顔近いし、こっちは泣き顔…。
「ダ…ダベですっ!ごんなの…」
泣いてるから…と言うんじゃない。ポーズがまずい。
男性に手を握られ泣いてるなんて、絶対に勘違いされる。誰に…って、モチロン父にっ!
「ごの写真、載せるの止めばしょう!ざが本さんにぞう言われたっで、び浦さんには言っどぎばすがら。ねっ⁉︎ 」
前回はイヤだと言った写真を強引に載せたのに、今回は自分が一方的に拒否。自己ちゅーもいいトコだ。
「そう?そんなに言うなら仕方ないけど…残念だな…よく撮れてるのに…」
「撮れてばせんってば!!」
思いきり否定。大きな声を出したら、鼻がムズムズし始めた。
「っくしょん‼︎ くしゅん!…くっしゅんっ!」
クシャミ止まんなくなった。どうしよ…。
「SAM…」
ユリアさんの声がして彼が椅子を離れる。良かった…こんなみっともない姿、見せずに済む。
部屋の隅に行ってクシャミを繰り返す。鼻をかんだら、ようやく落ち着いた。
「…はぁ〜」
苦しかった…。
「ダイジョ…ブ?」
片言の日本語に振り向くと褐色の瞳が見つめてる。
「だ…だいじょーぶでず…」
ビクつきながらスマイル。
ユリアさんが微笑み返す。メイク崩れてるから変に見える?
「MAYUKO…ハ…ハクションマオウ… 」
「は…?」
「オキノドクサマー…」
(お気の毒サマー?)
一瞬考えた。
(あ…そうか。ハクション魔王にお気の毒さま…か)
面白い言葉遣うんだって奥さん言ってたっけ。これがそうか。
「ど…どうぼ…」
妙な会話に聞こえる。笑われるのも無理ないか…。
「ユリア…」
坂本さんがドイツ語で話しかける。それに応じて彼女が私の方を振り向いた。
「オシャカサマ」
「えっ⁉︎ 」
(お釈迦さま⁉︎ )
どういう意味だろ…。
首を傾げると、ユリアさん、バレエの様に脚をクロスして膝を折った。くるっと背中を向けて先生の所へ走って行く。
(どういうこと…?)
言葉と行動が繋がらなくて混乱する。その私に彼が言った。
ペラ…と1枚目の原稿をめくる。
「これ…載せてもいいの?」
指差す箇所を覗く。
「…えっ⁉︎ ごれっで…あの時の…」
お礼を言われて涙が零れ落ちた時の写真。確かに1枚だけ、撮られた気がするけど…。
「僕は構わないよ。でも…君はいいの?」
単純に握手してるだけじゃない。顔近いし、こっちは泣き顔…。
「ダ…ダベですっ!ごんなの…」
泣いてるから…と言うんじゃない。ポーズがまずい。
男性に手を握られ泣いてるなんて、絶対に勘違いされる。誰に…って、モチロン父にっ!
「ごの写真、載せるの止めばしょう!ざが本さんにぞう言われたっで、び浦さんには言っどぎばすがら。ねっ⁉︎ 」
前回はイヤだと言った写真を強引に載せたのに、今回は自分が一方的に拒否。自己ちゅーもいいトコだ。
「そう?そんなに言うなら仕方ないけど…残念だな…よく撮れてるのに…」
「撮れてばせんってば!!」
思いきり否定。大きな声を出したら、鼻がムズムズし始めた。
「っくしょん‼︎ くしゅん!…くっしゅんっ!」
クシャミ止まんなくなった。どうしよ…。
「SAM…」
ユリアさんの声がして彼が椅子を離れる。良かった…こんなみっともない姿、見せずに済む。
部屋の隅に行ってクシャミを繰り返す。鼻をかんだら、ようやく落ち着いた。
「…はぁ〜」
苦しかった…。
「ダイジョ…ブ?」
片言の日本語に振り向くと褐色の瞳が見つめてる。
「だ…だいじょーぶでず…」
ビクつきながらスマイル。
ユリアさんが微笑み返す。メイク崩れてるから変に見える?
「MAYUKO…ハ…ハクションマオウ… 」
「は…?」
「オキノドクサマー…」
(お気の毒サマー?)
一瞬考えた。
(あ…そうか。ハクション魔王にお気の毒さま…か)
面白い言葉遣うんだって奥さん言ってたっけ。これがそうか。
「ど…どうぼ…」
妙な会話に聞こえる。笑われるのも無理ないか…。
「ユリア…」
坂本さんがドイツ語で話しかける。それに応じて彼女が私の方を振り向いた。
「オシャカサマ」
「えっ⁉︎ 」
(お釈迦さま⁉︎ )
どういう意味だろ…。
首を傾げると、ユリアさん、バレエの様に脚をクロスして膝を折った。くるっと背中を向けて先生の所へ走って行く。
(どういうこと…?)
言葉と行動が繋がらなくて混乱する。その私に彼が言った。