続 音の生まれる場所(下)
「…なんか飲みに行く?」
急に振り向かれた。
ドキッ。
「そ、そうですね…喉乾きましたね…」
美味しいお肉の味で口の中いっぱいだけど、アッサリしたものが欲しくなるのが日本人。
「じゃあ行こう!」
さり気なく肩抱いてくる。どうしていつもこんなふうにして歩きたがるんだろう…。
「あの…坂本さん…」
背中に回ってる腕の感触を意識しながら、つい聞きたくなった…。
「んっ?」
彼が私を見下ろす。
「どうしていつも…肩に手を回すんですか…?」
「えっ…⁉︎ 」
驚いた様な顔された。
(…この反応、もしかして意識してなかったってこと…?)
「ご、ごめん…つい…」
赤くなって外す。そういうつもりで聞いたんじゃないんだけど…。
「…別にイヤじゃないからいいんですけど…」
外さないで…とは、まだちょっと言えないか…。
「ク…クセ…なんですか?もしかして…」
何となくだけどそんな気がして聞いた。赤い顔して隣を歩いてる人が少しだけ考える。
「ドイツで歩く時…いつもそうしてたからかな…」
(話してない事ってこんな事…?)
もしもそうなら、私はどうして柳さんとのことを彼に話してしまったんだろう…ときっと思うけど…。
「坂本さん…教えて下さい…。ドイツでどんな生活してたのか…」
意を決して自分から言った。困り顔して彼が振り向く。
その口から出た言葉は信じられなくて、思わず耳を塞ぎたくなる程、苦しかった…。
「…ドイツでの僕は、君の知らない自分でいたよ」
厳しそうな目をしていた。優しい彼の顔じゃない。どこか、悪い人みたいな感じ。
初めて見せるその表情に、すこし…ゾッとしたーーー。
「ーーーレオンは…僕のこと、修行しかしない『SAMURAI』だと言ってたけど…それは…彼の勘違いなんだ…」
静かなバーで飲み始めた私達。酔い過ぎないようにと彼が勧めてくれたのは甘くないカクテル。
「…前に三浦さんと取材に来た時、ドイツでの工房の話をしたの覚えてる?」
「あまり教えてもらえなかった…って話ですね。覚えてます」
感情を抑え込むように、言葉を選ぶように話していた…。
「水野先生の所で修行始めた時もそうだったけど、ドイツでも同じだった。最初の頃は楽器にも触れさせて貰えなくて、ハッキリ言うと見せても貰えなかった…。工房に行ってもいつも邪険にされてて…何しに来たんだろうと思うような毎日で…」
「えっ…でもっ、ユリアさんのお父さんが先生の友人だったんでしょ⁉︎ 何とかしてくれなかったんですか⁉︎ 」
驚いて声を上げた。坂本さんがシッ…と指を立てる。きゅっと唇を噛み締めた。
急に振り向かれた。
ドキッ。
「そ、そうですね…喉乾きましたね…」
美味しいお肉の味で口の中いっぱいだけど、アッサリしたものが欲しくなるのが日本人。
「じゃあ行こう!」
さり気なく肩抱いてくる。どうしていつもこんなふうにして歩きたがるんだろう…。
「あの…坂本さん…」
背中に回ってる腕の感触を意識しながら、つい聞きたくなった…。
「んっ?」
彼が私を見下ろす。
「どうしていつも…肩に手を回すんですか…?」
「えっ…⁉︎ 」
驚いた様な顔された。
(…この反応、もしかして意識してなかったってこと…?)
「ご、ごめん…つい…」
赤くなって外す。そういうつもりで聞いたんじゃないんだけど…。
「…別にイヤじゃないからいいんですけど…」
外さないで…とは、まだちょっと言えないか…。
「ク…クセ…なんですか?もしかして…」
何となくだけどそんな気がして聞いた。赤い顔して隣を歩いてる人が少しだけ考える。
「ドイツで歩く時…いつもそうしてたからかな…」
(話してない事ってこんな事…?)
もしもそうなら、私はどうして柳さんとのことを彼に話してしまったんだろう…ときっと思うけど…。
「坂本さん…教えて下さい…。ドイツでどんな生活してたのか…」
意を決して自分から言った。困り顔して彼が振り向く。
その口から出た言葉は信じられなくて、思わず耳を塞ぎたくなる程、苦しかった…。
「…ドイツでの僕は、君の知らない自分でいたよ」
厳しそうな目をしていた。優しい彼の顔じゃない。どこか、悪い人みたいな感じ。
初めて見せるその表情に、すこし…ゾッとしたーーー。
「ーーーレオンは…僕のこと、修行しかしない『SAMURAI』だと言ってたけど…それは…彼の勘違いなんだ…」
静かなバーで飲み始めた私達。酔い過ぎないようにと彼が勧めてくれたのは甘くないカクテル。
「…前に三浦さんと取材に来た時、ドイツでの工房の話をしたの覚えてる?」
「あまり教えてもらえなかった…って話ですね。覚えてます」
感情を抑え込むように、言葉を選ぶように話していた…。
「水野先生の所で修行始めた時もそうだったけど、ドイツでも同じだった。最初の頃は楽器にも触れさせて貰えなくて、ハッキリ言うと見せても貰えなかった…。工房に行ってもいつも邪険にされてて…何しに来たんだろうと思うような毎日で…」
「えっ…でもっ、ユリアさんのお父さんが先生の友人だったんでしょ⁉︎ 何とかしてくれなかったんですか⁉︎ 」
驚いて声を上げた。坂本さんがシッ…と指を立てる。きゅっと唇を噛み締めた。