続 音の生まれる場所(下)
バックの中から電話を取り出した。
何をしたらいいか分からないけど、とにかく彼に会わないと……!

震える手でボタンを押した。コール音を聞きながら焦りだす。
この間、あんな態度を取るんじゃなかった。

(私、バカだった…大事なこと…忘れてた…)

お願い出て…と願う。朔の時のように、これを最後になんかしたくない…!



「……はい…」

相当鳴らした後、やっと彼が出た。不機嫌そうな声。…怒ってる…?

「あ…あの…真由子です…」
「……うん……何……?」

気だるそうな声…具合でも悪い…?

「私…坂本さんに…ううん、理さんに話したいことがあって……今から会いたいんだけど…いいですか…?」

一瞬、押し黙る。ハラハラする様な間が空いて、彼が囁いた。


「……いいけど…まだ寝てるから……起こしに来て…」

ドキッとする様な甘い声。心臓の音を耳にしながら、ぎゅっと電話を握った…。

「うん…すぐ行く…」

電話を切って、走り出そうとして振り向いた。線香の煙が立ち昇る中に眠る朔。私の心の一等地に住んでる人。
…どんなに願っても、もう二度と…会えない人……。

「…さよなら朔……私、今度こそホントの意味で歩き出すよ…」


真っ直ぐ駆け出した。
目的の場所はあそこ。

『音の生まれる場所』ーーーーー
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