続 音の生まれる場所(下)
エピローグ

集う人達

ゴールデンウイークが明けた週末、やっと楽団の練習に参加できた。


「真由ちゃん!久しぶりー!」

ドアを開けると、柳さんが走り寄ってきた。いつもの調子でふざけながら、抱きつこうとする。

「やめろ!」

後ろに立ってた彼が、マジメな顔で退けた。それを見て、ハルシンが笑う。

「もっさん、どれだけ真由のこと好きなっスか!」
「ホント!マジになり過ぎ!」

知らない二人は笑うけど、柳さんは彼の気持ちにちゃんと気づいてて…

「…分かったよ!もう触んねーよ!」

両手上げてこっちを向いた。
にっこり微笑む。すると、納得したように微笑み返してきた。

「あーあ…俺も彼女欲しいなぁ…」

ボヤキながら背中を向ける。彼と目を見合わせて、小さく笑った。
心配する必要なんかない。柳さんと彼はライバルであり、親友でもあるから。


「おーしっ!今日もはりきって練習すっぞー!」

柳さんの号令で皆が集まる。
初めて参加した時と同じ。たくさんの音が集まる場所。
そして……


「今日も一段と激しくぶつかってるわね。あの二人…」

同じフルートパートの石澤さんが囁く。喧嘩してるみたいな音の交錯。初めて聞いた時は、ホントに驚いた。

「相変わらずですね…変わんない」

私が休んでる間も、ずっとこんな調子だった…と聞かされた。
作り上げていくメロディーの為の語り合い。
プライドの高い二人だからこそ、折り合いがつかない時もあるけど…


(あ…音が揃った…)

聴いてると分かる。まとまっていくメロディー。私達の曲が、出来上がっていくーーー。


久しぶりの練習室で、たくさんの音がぶつかり合う。 
その音の中で、私は生きてることを実感する。
初めて会ったあの日のように、彼の語りに包まれながら……。


…ねぇ理さん…
いつかまた、二人で演奏できたらいいね。
…あの星空のように、キレイなハーモニーを響かせてーーー。
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