センチメンタル・スウィングス
「・・・ポケット文庫より、生身の男の方が断然あったかいって、おまえ忘れてるようだな。俺が思い出させてやるよ」
「いえ、結構です」
「おい檀上ーっ!なぜ俺に豆をまく!」
「今日は節分だから豆まきするぞって言ったのは、和泉所長じゃないですか」
「ってことは、俺が鬼か」
「違うんですか?」
「真顔で聞くなっ!」
「ぎゃっ!ちょ・・・っと」

和泉さんは、私に向かって掴んだ豆を投げようとしたけど、心変わりをしたのか、私の前に掴んでいる豆を差し出した。
彼の大きな手の平には、意外とたくさんの豆粒がある。

「年の数だけ食べろって言うだろ」
「一つ多いです」
「ゴチャゴチャ言わずに、ほら!一つ食え」

と和泉さんが言いながら、私に近づいた。

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