センチメンタル・スウィングス
「・・・和泉さん」
「なんだ」
「また3日で挫折したんですね」
「うっ。なぜ・・・バレた」
「においです。消臭剤使ってるようですが、それでもタバコの臭いがかすかにします」
「・・・しまった・・・」と呟いて、ドラマチックに膝をつく和泉さんに、同僚の飛永さんが「というわけでー、次の飲み会は、また和泉さんの奢り確定~!」と追いうちをかけると、「ゴチになりまーっす!」と方々から声が上がった。

「おいおまえら!俺を奢り貧乏にする気か!?」
「だったらタバコ、きっぱり止めればいいじゃないですかー」
「大体、“俺が禁煙に挫折したら、俺の奢りで飲みに行く!”っていつも言ってるのは、所長の方でしょ?」
「そこまで自分を追い込んで、禁煙にトライし始めて早半年経つのに、なかなか成功しませんねぇ」
「ニコチンパッチは?」
「痒そうだからダメ」
「鍼は?ダイエットのツボがあるように、禁煙のツボを刺激してもらえば・・・」
「痛そうだから却下!」

そのとき、頭や腕や背中に、細長ーい鍼をいっぱい刺されて、寝台ベッドにうつ伏せで寝ている和泉さんの姿が思い浮かんでしまった私は、彼に見つからないよう、こっそりと笑わせてもらった。 

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