センチメンタル・スウィングス
「じゃー桃は人形を拭いて、それを俺らに渡す係」
「はい」
「桃子。埃吸うなよ。おい慎矢、マスクないのか」
「ない」
「お兄ちゃん!人形はそんなに埃被ってないから!大丈夫だよ」
「そうか・・・。おまえに重い人形を持たせるわけにもいかないしな」
「え。でも人形って割れ物だから取扱い注意だけど、重くないよ」と言う私の言葉を、お兄ちゃんは全然聞いてない。

「かと言って、せっかくおまえに会えたのに、通常の仕事に戻らせるのは、お兄ちゃん寂しいしなぁ・・・くそっ。俺は今兄として、苦渋の選択を迫られているということなのか!?」
「・・・来た。過剰なまでのシスコン」という所長の呟きが、自分の世界(シスコンワールド)に入り込んでいるお兄ちゃんには、全然届いてないらしい。

普段は周囲から「冷徹」と言われているほど、クールなふるまいをするお兄ちゃんは、私が病気になってから、やたら私の体調を気遣うようになった。
その態度やふるまいは、まさに、和泉さんがおっしゃるとおり、「過剰なまでのシスコン」兄に変貌する。
それも場所を問わずだから・・・今は非常に居心地が悪い。

だって、事務所の人たちも所長も、私が病気だったって知らないから。

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