センチメンタル・スウィングス
私は、一瞬だけよろめいた心の体勢を慌てて立て直すと、「和泉所長、言う相手を間違えてますよ」と言って、椅子から立ち上がった。

私の口調はいつもどおり、冷めてたよね。よし。

「お手洗いに行ってきます」
「食事は?もういいのか?」
「おなかいっぱい」




・・・和泉さんのことは嫌いじゃないし、仕事の面では尊敬している。
でもこの人に関わるのは、仕事だけで十分。
それ以上関わるのは・・・嫌。
だってあの人は、さっきみたいなセリフを日常会話のように言う人だから。
ああいうセリフを言われる、「和泉さんの友だち」の一人(オンナ)になるつもりはない。

私は、自分の心に確認するように鏡を見ながら、桃色のリップを、丁寧に唇に塗った。


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