センチメンタル・スウィングス
なんか・・・和泉さんの顔見てると、心臓がドキンと跳ねて・・・見られない。
つい俯いた私の頭に、今度は彼の大きな手がポンと乗って・・・ドキリとした。

「おまえさ、恋愛経験ゼロじゃないだろ?」
「・・・私が婚約破棄したこと、兄に聞いてませんか」
「いーや」
「じゃあ、事務所のみなさんと飲みに行ったときに聞いたでしょ」
「・・・ああ。で、おまえの恋愛経験、それ以降は皆無」と和泉さんは言いながら、私の頭を、その大きな手で優しく撫でた。

気持ちいい・・・けど私、すごく幼い子どもになったような・・・。
女扱いされてないような気がする。

「それでいいじゃない」という私の心の囁きに、なぜか納得できなくて、私はパッと顔を上げた。

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