君の隣しかいらない
「なんで?」



「今は1人は嫌だ。お願い。」


泣きそうに目を潤ませる。



「ん。いいよ。わかった。」



ぽんぽんと優しく私の頭を撫でた。


「私ね、慶和くんが好き。」

下を見て涙をこらえるふりをして言う。



「え。」

彼は驚きを隠せないようだった。


「あ、ごめん…なさ…」

言葉が言い終わるうちに涙が私の目から溢れ出た。



もちろん、これもお芝居。



「困らせたくなかったのに…ごめん…伝えちゃって…っ…ひっく…」


「あーうん。困ったけど。うん。ありがとう。泣かないで。」


彼が私の涙を拭う。



「ごめん。振られるのなんて分かってるよ。分かりきってたの…せめて、お試しでもいいから…付き合って…っ…」

嗚咽を漏らしながら言葉を繰り出す。




「ごめん。それはできない」




こんなこと言われるのだって想定内。私はそこまでバカじゃない。


「見て…」

私の左腕を突き出す。



左腕の手首には自分でも見てて気持ち悪くなるくらいのリストカットの傷があった。



これは本当の傷ではない。昨日の夜に自分で念のため特殊メイクをしたのだ。


まるで本物のように。。。



彼は何も言わずに私を抱きしめた。



「…っ…ひっく…うぅ…辛かったの…うぅ…こんなの…見せて…付き合って…くれるなんて…思って…ない…」

「喋んなくていいから。」

もちろん、こんなのを見せて引く可能性もあったと思うが彼の場合妹がいじめられリストカットをしていた。


同情の目を向けられるのはごめんだけど、これは最終手段ってやつだ。



これじゃ彼もほってなんておけないだろう。




「好き…初めてそう思えたのが…慶和くんだったの…ひっく…」



「ごめん。いいよ。お試しだけど付き合ってあげる」


「本当…?ありがとう…ありがとう…。」



私の背中をさすりながら私を抱きしめた。ぎゅっと。そう。強く。




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