らぶ・すいっち
その表情、反則です!!
「料理教室は楽しいのに、講師があれじゃあなぁ」
商品パンフレットを新しいものに変えながら、私は小さく呟いた。
今日は金曜日。所謂普通の企業なら明日、明後日とお休みだろう。
休み前の金曜日ともなれば、嬉しくてウキウキと俄然はりきって仕事をしてしまうのだろうか。
しかし、私は世間一般とは休みがずれているため、残念ながら明後日の日曜は仕事だ。
明日の朝から“美馬クッキングスクール”がある。順平先生の嫌みに打ち勝つためにも気合いを入れなければ。
チラリと目に入った鏡には、今日も隙なくメイクをしている自分が映った。
私は、百貨店の化粧品フロアにある『シュプリーズ』で、ビューティーアドバイザーをしている。
国内大手化粧品メーカーである『シュプリーズ』の制服に身を包み、髪は後れ髪を許さないほどキツく髪を結い上げていて、見た目には細心の注意を払っている。
メイクは、シュプリーズの製品を使い、お客様に質問されてもすぐに答えられるよう勉強もかかさない。
日々、勉強だが、お客様がキレイになっていく瞬間を垣間見ることができるこの職業はやっぱり楽しい。
今は午前10時。先ほど百貨店は開店したばかりで、まだまだ客足は少ない。
だが、今日は金曜日だ。きっと夕方からが忙しくなっていくことだろう。
(あ、今日初めてのお客様だわ)
シュプリーズの製品を手に取り、困った様子の女性が一人来店された。