らぶ・すいっち
車はそのまま会場にある地下駐車場に吸い込まれるように入っていく。
一気に薄暗くなる視界に、目がまだ慣れない。
警備員の誘導に従い、車はゆっくりと停車した。
順平先生が運転していた車が停車したのを確認したあと、警備員はまた次の車を誘導するために離れていく。
ふと気がつくと、人の気配は全くなくなってしまった。
暗闇、車内、二人きり。その現状に今さらながらに気がつき、私は慌ててシートベルトを外した。
「で、では。講演会場へと行きましょうか」
声が裏返っている。動揺しているのが順平先生に分かってしまうだろう。
恥ずかしくて慌ててカバンを握りしめた私の手に、大きな手の平が覆い被さる。
「え?」
その手の持ち主、順平先生を見ると、先ほどより私に近づいていた。
近づいているというより、かなり近い。頬と頬がふれ合ってしまうほどだ。
「ひとつだけ、種明かしをしてあげましょう」
「は……」
「英子先生、そして土曜メンバーの皆さんは、私の味方なんですよ」
呆気に取られている私の手の甲に、チュッと音を立ててキスをする順平先生。
硬直している私に、順平先生は余裕の笑みを浮かべる。
「さぁ、須藤さん。しっかり今日は勉強しましょうね」
「じゅ、順平……先生?」
あまりの展開についていけない私に、順平先生はどこか悪魔みたいに恐ろしいほどの笑みを浮かべた。
「色々と、ね」
そう言うと、順平先生は再び私の手の甲にキスをしてきたのだった。