らぶ・すいっち
「一日、目一杯あるんですね……」
「ええ。今日は料理や栄養などの勉強会ですからね。年に数回しか行いませんから、一日に詰めこんで行うんです」
いつものことです、と苦笑いする順平先生に「へぇ……」と返事をしていると、誰かが私たちの席に近づいてきた。
誰だろうと冊子を見るのをやめ、顔を上げる。
(う、うわぁ……!)
そこには順平先生と同様、料理研究家としてメディアにもたくさん露出している牧村利里子(まきむらりりこ)が立っていた。
キレイな栗色の髪は肩の辺りで緩くカーブを描き、軽やかに揺れていて、それを耳にかける仕草は色っぽい。
スタイルもとてもよくて、かなりキレイな人だ。
テレビで見かけたことがあるが、実物はとても華奢だ。でも、出るところはしっかりとあり、メリハリがきいたボディは艶っぽさを振りまいている。
メイクひとつとっても、どれも丁寧で洗練されている。
彼女がしている口紅は発色がよく、CMで見かけたとき、私も一本欲しいなぁと思ったものだ、たぶん。
彼女の全身、トータルで見ても、魅力的な女性だということはすぐにわかる。
牧村さんは、順平先生に妖艶な笑みを浮かべた。
「お久しぶりね。順平先生」
声をかけらえた順平先生は、今気がついた様子で顔を上げたが、その横顔はとても無表情だ。無表情というか、どこか不機嫌だ。
二人ともメディアでの活動も著しいから、顔を合わせたこともあるのだろう。
しかし、あまりに温度差のある二人に首を傾げてしまう。
眉を顰めていた順平先生だったが、それを和らげ牧村さんを見上げた。