らぶ・すいっち




「よほど以前の私は女を見る目がなかったということでしょう。今なら女を見る目があると断言できますけどね」
「えっと……?」


 それは私のことを言ってくれていると思っていいのでしょうか。

 問いかけたくても聞けない。だってまだ順平先生には、色々謎が残っている。
 グルグルといろんな感情が脳裏に浮かんでは消えていく。

 だが、次の瞬間。何もかもが頭の中から消えてしまった。
 それは順平先生に突然手を握られたからだ。

 思わず飛び上がりそうになったが、それと同時に講演会が開始してしまった。
 慌ててもう片方の手で口を押さえる。

 隣を睨み付けると、順平先生は魅惑的な笑みを浮かべていた。
 そして小さく私の耳元で囁いた。


「本当は雰囲気があるところで君の手を握りたかったが、今はこれでもいい」
「っ!」


 言葉なく顔を真っ赤にさせる私を見て、順平先生は甘い笑みを浮かべ、私の心臓を打ち抜いた。


「公私混同すると言ったでしょう。今日は一日私に付き合ってもらいますよ」


 そういって笑う順平先生は、有無を言わせないという雰囲気だ。

 順平先生に触れられている手が熱い。身体中の血液が沸騰しているように全身が熱い。
 ドキドキしすぎて苦しい。

 色々順平先生には種明かしをしてもらいたいのに、講演会が始まってしまった今、それもできない。
 真っ赤になって慌てている私の手を、順平先生は講演会の最中ずっと握っていて離してくれなかった。





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