らぶ・すいっち
恋愛スイッチ
お昼を挟んでからも講演は続き、やっと終わった十五時。
やっとという言葉がしっくりくる一日だったことは間違いない。
長い講演が決して退屈で嫌だったわけじゃない。久しぶりにこういった勉強の場にくることができて良かったと心から思っている。
今日は醤油メーカーの営業が講師を務めたのだが、今まで何気なく使ってた調味料である醤油の発見があって凄くためになったと思う。
午後からは、料理教室連盟の先生方によるデモンストレーションや、栄養学の勉強があり、実りある一日になった。
栄養学なんて今まで勉強したこともなかったので、すごくためになった。
調理するだけでなく、そういったことにも気を配れるようにいつかなれればいいなぁ、なんて思う。
講演会の一日はとても充実していた。これは間違いない。
私が疲労困憊した理由は別のところにある。それは隣に座る御仁のせいだ。
講演会が始まってすぐ、順平先生の元彼女である牧村さんを撃退したあとからずっと、順平先生は私の手を握り、それは今も尚続いている。
昼休憩のときはさすがに離れてくれたが、午後の講演が始まった途端、また再び順平先生の手に捕まってしまった。
ドキドキしすぎて講演会どころじゃないと思っていたのだが、講演内容は面白いし、順平先生の手は温かくて優しく、最後には心地よいとまで思ってしまう自分がいた。
講演会が終わり、ふと現実に戻った途端、今までのツケが一気に私を襲ってくる。
(ああ、もう私ったら。もっと拒みなさいよ……講演中ずっと手を繋いでいただなんて)
先ほどまでは薄暗い会場内だったが、講演会の終了とともに会場内が明るくなった。
となると、私と順平先生が手を繋いでいるというのを他の皆様にも見えてしまうことになる。
慌てて順平先生から逃れようとしたのだが、それを許してくれる順平先生ではない。