らぶ・すいっち




「いかがでしょうか?」

「あら……思ったより明るい色目になるのね」

 感心したように鏡を覗き込むお客様に、私はにっこりとほほ笑んだ。

「今日のお洋服にも、よくお似合いになりますよ」

「そう? じゃあ、これをいただくわ」

 満足げに頷いたあと、お客様は買うことを決めてくれたようだ。
 
「ありがとうございます。ただいまお包みいたしますので少々お待ちください」

 顧客カードを書いていただいている間に、私はペーパーバックを奥から取り出す。

 口紅と、今日届いたばかりの商品パンフレット。それからサンプルもいくつか入れる。
 お会計を済ませたあと、お客様にペーパーバックを差し出した。

「口紅と一緒に、この春に出たばかりのアイシャドーのサンプルを入れさせていただきました。よろしければお試しください」

 ありがとうございました、とお客様の姿が見えなくなるまで深く頭を下げて見送る。
 
 ゆっくりと顔を上げた瞬間、叫んでしまった。


< 14 / 236 >

この作品をシェア

pagetop