らぶ・すいっち
「いかがでしょうか?」
「あら……思ったより明るい色目になるのね」
感心したように鏡を覗き込むお客様に、私はにっこりとほほ笑んだ。
「今日のお洋服にも、よくお似合いになりますよ」
「そう? じゃあ、これをいただくわ」
満足げに頷いたあと、お客様は買うことを決めてくれたようだ。
「ありがとうございます。ただいまお包みいたしますので少々お待ちください」
顧客カードを書いていただいている間に、私はペーパーバックを奥から取り出す。
口紅と、今日届いたばかりの商品パンフレット。それからサンプルもいくつか入れる。
お会計を済ませたあと、お客様にペーパーバックを差し出した。
「口紅と一緒に、この春に出たばかりのアイシャドーのサンプルを入れさせていただきました。よろしければお試しください」
ありがとうございました、とお客様の姿が見えなくなるまで深く頭を下げて見送る。
ゆっくりと顔を上げた瞬間、叫んでしまった。