らぶ・すいっち
招かれざる電話
お料理はとても美味しくて、ほっぺが落ちてしまいそうだ。
さすがは順平先生。美味しいものがどこにあるのか、よく知っている。
店主さんもお話上手で楽しく、産地がどこだとか、こんな調理法があるなどなど。
色んな事を教えてくれたので、とても勉強になった。
今の私では、教えてもらった調理法は無理に近いが、少しでも上達して今日教えてもらったことをいかせれたらいいな。
講演会でも色んなことを学んできたが、こうしてお食事をしながらの勉強もとても楽しい。
今日習ったことを糧に、少しでも料理スキルをアップできたらと心から思う。
思うのだが……。
(じゅ、順平先生……近いです)
カウンター席に座った私たちは、店主さんとおしゃべりしながら食事をしている。
カウンター席なので、当然ながら隣に座り合わせると向かい合わせの位置よりかなり距離は近くなる。
しかし、通常カウンター席でもこんなに接近して隣り合うことはないと思う。
戸惑ってしまうほどに、順平先生がカウンターの椅子を私に近づけているのだ。
先ほどそのことについて順平先生にやんわりと離れてくれとお願いしたところ、笑顔で「却下です」と断られてしまった。
あ然とする私に、大笑いする店主さん。もう、好きにしてといいたくなるほどの状況だ。
「さて、最後のデザートだ。彼女ちゃん、まだ食べることができる?」
「はい、もちろん!」
嬉々として答えると、店主さんは嬉しそうにニッと口角を上げた。
じゃあ彼女ちゃん専用メニュでも作ろうかなぁと、店主さんが鼻歌交じりで冷蔵庫を開いた時だった。
私のスマホが、誰かからの着信を知らせた。