らぶ・すいっち




「ゲッ!」

 思わず眉間に皺を寄せ、目の前にいる人物を睨み付けた。

 まさか、職場で順平先生に会うとは思ってもみなかった。
 だってここは化粧品フロア。男性である順平先生には無縁の場所のはずだ。

 突然の来訪に、私はどう対処していいものかと考えあぐねる。

 順平先生と顔をつきあわせるのは、“美馬クッキングスクール”でのみのはずだ。
 今日はまだ金曜日。私が受講しているのは土曜日のはず。

 一日早すぎですが、どうしてですか!
 叫び声にならない心の声を押し殺していると、順平先生は涼しい顔でいつものように毒を吐いた。

「なんですか。先ほどまでの君とは全くの別人になってしまいましたね」

「……」

 それは仕方がないでしょう。天敵が突然現れれば、誰だって驚くし、不機嫌な顔をしてしまうだろう。

 ムンと唇を横に引く私に、順平先生は柔らかく笑った。

「でも、驚きました」

「え?」

「こうして働いている姿を見るのは初めてですが……君は笑顔がキレイですね」

「っ!」

 直球。ドキューンと胸を打ち抜かれた。そんな感じだ。


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