らぶ・すいっち





順平先生の低くて優しい声が、耳をくすぐる。

 心臓の鼓動は猛スピードで高鳴り苦しいほどで、背中に回された先生の腕はたくましくて温かい。

 彼を見上げればそこにはまっすぐ心まで射貫かれてしまいそうな黒い瞳がある。
 それを見て、またひとつ大きく胸が高鳴った。

 この状況は非常にマズイ。
 こうして順平先生に抱きしめられていることも問題ではあるのだが、この家には英子先生はいない。それどころか今日はもう帰ってこない。

 このまま二人きりでこの家にいたら……私はどうなってしまうのだろう。

 私は先生の胸板を押し、腕の中から脱出することに成功した。
 ホッと胸を撫で下ろしたあと、話題を変えるようにわざと声を上げた。

 
「そういえば、調べたいことってなんですか?」


 話題を変えることができたと安堵したのもつかの間。

 順平先生はとんでもないことをサラリと言い出したのだ。目が点。まさに点。
 鳩がまめでっぽううんぬんどころではない。

 思考がストップしてしまった私に、順平先生はもう一度言った。


「君を抱きたいのですが、どうでしょう?」


 そんなまじめな顔をして、私の目をジッと見つめられたら「冗談ですよね」だなんて笑い飛ばせなくなってしまう。

 明らかにこれは本気だ。マジだ。
 このままではいけないと、私は弾かれたように声を上げた。


「ちょ、ちょっと待って! それとこれとは全然違いますよ」
「いいえ、君を抱けば私が調べたいと思っていたことは自ずとわかります」




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