らぶ・すいっち
私を抱けば分かることって一体なんだろう。
いやいや、とんでもない。私たちはまだ両思いとはいいがたい。
先生からの気持ちは聞いた。だけど、私はまだ本当の気持ちを伝えていない。
こういうのはお互いのことを理解して、そのあとお付き合いし、ほどよいタイミングでというのがセオリーではないだろうか。
今までの私はそのセオリーをきちんと間違いなく踏んでいる。
しかし、順平先生はセオリーなんぞ踏み倒せとばかりの勢いだ。
イケメンでモテる男というのは、すぐにこういった手段に持ち込むのだろうか。
鮮やかすぎて何もいうことはできない。
いや、でも言わなくちゃ。ここはなんとしてもセオリーどおりにいくべきだ。
まずは私の気持ちを伝える。これが先決だろう。
しかし、私の口は言葉を発してはくれない。先生の魅惑的な声に魔法をかけられてしまったようだ。
再び私に手を伸ばす順平先生。それを私は拒むことはできなかった。
むしろ喜びのほうが勝っている。
どうしよう……困った。気持ちと常識、板挟み状態の私は困惑気味である。
それなのに順平先生は畳みかけるように言葉を紡いでいく。
それも甘ったるくて喉が痛くなっちゃうような言葉の数々に、私は翻弄されてしまう。
「君は私のことをどう思っていますか? 嫌いではないですよね」
「……」
順平先生の声はいつも以上に優しくて、どこか情熱的に感じた。
今まではクールなイメージしかなかったが、ここ最近はそのイメージを覆すほど情熱的だ。
そんな先生に翻弄されながら、私は自分の思いを確認していた。
先生に触れられてドキドキするのは何故?
ドキッとするような情熱的な言葉を言われて戸惑うのは?
キスされて嫌ではなかったのはどうして?
その答えは出ている。あとは私が正直に順平先生に言うだけ。
だけど、なぜかそれができない。土壇場になると素直になれない私はどうしたらいいものだろうか。
アラサーの私は、いろんな場数を踏んできたはずだ。それは恋愛にもいえること。
それなのに順平先生を目の前にすると、初恋を経験したばかりの学生みたいだ。
いつものようにはいかない。それが本音だ。