らぶ・すいっち




 順平先生はキレイな顔立ちをしているし、世間一般でカッコいい男の部類に入るのもわかっている。

 それに順平先生は有名人。それだけでも女の子が黄色い声をあげてしまうということも理解はできる。

 しかし、出会いが出会いだったため、今まで先生の言動や仕草で胸がドキドキするなんてことは一度もなかった。

 料理の腕があまりになく、背後で先生の厳しい視線を感じたときには、さすがにゾクリと冷や汗が背中を伝ったこともあったけど。

 それでも、こんなふうにドクドクと胸の鼓動が早くなって苦しくなるなんてことはなかった。
 
(や、やだ……。落ち着かなきゃ)

 今、一瞬だけ女の子たちが順平先生を見てキャアキャアと騒ぐ気持ちがわかった気がした。

 息を整えている私に、あの笑顔は嘘だったのかと思うほど黒い笑みを浮かべ、順平先生はフンと笑う。

「とはいえ、あの料理センスでは魅力も半減ですが」

「なんですって!!」

 前言撤回。一瞬でもときめいてしまった私がバカでした。
 やっぱり順平先生は、順平先生だった。


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