らぶ・すいっち
「女性にクールな対応ばかりしていた順平先生が、京香ちゃんに骨抜きにされている樣はなかなか面白いわよ」
「今日の料理教室だって、順平先生の視線はいつも京香ちゃん。ほほ笑ましいを通り越して、好きにやってちょうだいって思っちゃったわ」
「……」
ああ、順平先生固まっちゃっている。こんな姿もレアものだと思う。
それはおば樣たちも同じだったらしく、順平先生を見てニヤニヤと人の悪い笑みを浮かべている。まったくもって強敵である。
いつもならサラリとかわしてしまう順平先生なのに、さすがに今日はいつもと様子が違う。
「人生の先輩たちには負けました。白状しましょう、そのとおりです」
「え!?」
思わず私一人で叫んでしまった。そのとおりって……おば樣たちの言葉を肯定してしまうのですか、順平先生。
ジワジワと顔が赤くなっていく私に、順平先生は涼しい顔でほほ笑んだ。
鼓動が周りに聞こえてしまうかもしれないと思うほどに大きく胸が高鳴った。
アワアワと慌てる私を見て、順平先生はフッと笑いを零す。
「須藤さん」
「は、はいっ!?」
「皆さんからの承諾も得たことですし、これからはもっと積極的にいかせていただきますね」
「せ、せ、積極的とは、具体的に?」
順平先生は突然何を言い出したのか。
パニックを起こした私も何を口走ったのかわからない。
真っ赤になって狼狽える私に、順平先生は楽しげに笑った。
「個人レッスンのときと同じような?」
「なっ!?」
背後から抱きしめられ包丁を持つ手を握られたりだとか。耳元で艶っぽい声で囁いたりだとか。そんなことをするというのですか、順平先生。
目眩が起きてしまいそうなほど熱烈な言葉を言われ、私はもう両手を上げるしかない。降参だ。
そんな私たちのやりとりを遠巻きで見ていたおば樣たちから、一斉にため息が零れた。