らぶ・すいっち
「ああ、もう。私たちは帰りますからね。あとはお二人で好きなだけどうぞ」
「ちょ、ちょっと待って! 待ってください!!」
おば様たちを引き留めようとしたのだが、無情にも「お幸せに」とニンマリ笑いながら教室を後にしていく。
私もおば樣たちに着いて逃げようとしたのだが、それは順平先生の手によって阻まれてしまった。
「どこに行くのですか? 須藤さん」
「えっと……授業も終わったことだし、私も皆さんと一緒に帰ろうかと……」
絶対に危険だ。こんな顔をした順平先生は絶対に危ない。
先日、料理講演会が終わって帰路についている間や、美馬家でのあれこれが脳裏によみがえってくる。
あのときと同じ表情をした順平先生が、今、私の目の前でほほ笑んでいる。
絶対にヤバイ。
慌てる私を、順平先生はギュッと抱きしめてきた。
「じゅ、順平先生?」
「もう教室には誰もいませんから。こうして君を抱きしめてもいいでしょう?」
「よ、よ、よくないと思います。いつ何時誰がやってくるかわかりませんから!」
「大丈夫。土曜メンバーの皆さんは気を利かせて今日はもうこの教室には近づかないでしょうから。事務室も今日は誰もいません。施錠は私が頼まれていますしね」
ほら、安心でしょう、と優しく笑う順平先生を見て思う。
(貴方が一番危険なので、全然安心ではないんですけど!!)
そんな私の声が、順平先生に届くわけがない。だって……。
「ほら、もうジッとしていて。水曜日からこの数日、気が狂いそうなほど君に会いたかった」
まだ実質二日しか経っていない。
でもそんなこと言われたら、順平先生に黙って抱きつくしかなくなるじゃないか。
カーッと耳を真っ赤にさせた私に、順平先生は囁いた。
「君の恋愛スイッチを入れますよ。何度も、何度でも……ね」
彼は待ちきれないと呟き、柔らかく情熱的な唇で私に触れたのだった。