らぶ・すいっち





「両親は山暮らしがしたいと言って、父親の定年退職後近くの山村に移り住んでいます。妹は結婚して家を出ていますが」
「順平先生、妹さんがいたんですか!?」
「ええ、いますよ。あと……」


 言葉を濁したが、目の前の須藤さんは特に気にしていない様子だ。

 知らなかった! とか、何歳なんですか? とか、次から次に質問をしてくる。
 その瞳はキラキラ輝いていて 興味津々といった様子だ。

 相変わらずの須藤さんに、私は軽やかに笑う。こういう表情も彼女の魅力のひとつだと最近気がついたのだ。
 ニコニコして彼女を見ていたのだが、いきなりハッと我にかえったように表情を変える須藤さん。

 私はそんな彼女の急変した表情に首を捻る。


「えっと順平先生のご家族のこととか色々聞きたいのですが、その前に私の質問に答えてもらえますか?」
「ん? 同棲の話ですか」


 違います、とむきになって怒る姿が可愛いと思ってしまう私は、これからも彼女を困らせることばかりしてしまうのだろう。
 しかし、ここで笑い出したらさすがの須藤さんも怒り心頭だ。

 私は静かに彼女の質問とやらを聞くことにした。


「で、なんの話でしたか? 須藤さん」
「だから! それです!」
「え?」


 何のことだろうと首を捻ると、須藤さんは憤慨している。

 訳が分からない私は、彼女の言葉を待つしかほかない。
 須藤さんの言葉の意味が理解出来ずにいると、彼女は深く深くため息をついた。



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