らぶ・すいっち
「君を“京香”と呼ぶとき、きっと天敵の顔が浮かんでおもしろくないことでしょう」
「……」
「考えてもごらんなさい。須藤さんを裸にして組み敷くとき」
「そ、そんなこと考えないでください!」
真っ赤になって抗議する彼女を笑顔でスルーする。
「そのときに“京香”と呼んだら、天敵の顔が思い浮かぶんですよ? 私は目の前の彼女を堪能したいと切望しているときに!」
耐えられないです、とため息交じりに心情をはき出すと、突然須藤さんは笑い出した。
お腹を抱えて、今度はおかしくてしかたがない様子で涙まで流す。
私はポカンと口を開け、彼女の行動を見つめた。
「別にいいじゃないですか、猫ちゃんの顔が浮かんでも」
「よくないです」
「他の女性だったら耐えられないけど、猫ちゃんなら許しますよ?」
「私は絶対に嫌です。君以外のことなど考えたくない」
「だ、だから。そういうこと真顔で言わないでくださいって何度言ったら!」
「何度言われても無理です。本当のことを口にして何が悪いのですか? 私は言ったはずですよ。君に嘘をついたことは一度もないと」
そうですけど、と視線を泳がせて慌てる彼女をもう一度抱きしめた。
「なので、納得はいかないかもしれませんが。名字呼びで許してください」
「えっと……それは嫌ですね」
「……そうですよね」
私だってもし須藤さんに、いつまでたっても“美馬さん”で呼ばれたりしたら、強制的に名前を呼んでもらえるように仕向けるだろう。
さて、どうしたものか。頭を悩ましていると、須藤さんはポンと手を叩いた。