らぶ・すいっち
視線を泳がせ、顔なじみのマスターに「これは一体、どういうことですか?」と声に出さずに視線で問いかけると、マスターは困ったように肩を竦めるだけ。
マスタ−、残念ながらそれでは答えになってはおりません。
そのまま土曜メンバーの皆さんに視線を泳がせ、この集まりについて聞く。
しかし、先ほどの返答のように逆に質問で返されてしまう。これでは埒があかない。
早々とお手上げ状態の私に、土曜メンバーの皆様は口々に言いたいことだけを言っていく。
「今日はね、今後の京香ちゃんについて話し合いをしていたのよ」
「そうそう。そこにはやっぱり当事者のお祖母様である英子先生もいなくちゃでしょ」
おほほ、うふふ、とマダム特有の笑い声をあげ、どんどん話を進めていく面々。
いや、待ってください。私の質問に何も答えてくれてはいませんよ。
そう口答えをすると、皆さんは口を尖らせブーブーと非難をしだした。
今後の京について話す、それは一体どういうことなのか。
この場合の当事者というのは間違いなく私のことで、そのためにお祖母さんも巻き込んでこの話し合いの場を設けたというのか。
全く理解不能である。しかし、私は彼女たちに頭が上がらないのだ。
例の講演会の際には、彼女たちにお願いをしたおかげで、なんとか京と二人きりで参加することができた。
あれがきっかけで今があるといっても過言ではないだろう。
それを目の前の土曜メンバーの皆さんもわかっている。だからこそ、こんな会合を開いて迷惑……基、私たちの行く末を見守るための会合を開いたのだろう。
ありがたいような、ありがたくないような。この場に京がいたら、間違いなく真っ赤になって反論するだろう。
いや、どうだろうな。京はああみえて土曜メンバーの皆とは仲良くやっているし、接客業を仕事としているため、うまく窘めてくれそうだ。
これはもう、私の手には負えない。京を呼ぼうか。そんな考えを脳裏にちらつかせながら、この不可解な会合を目の前にして途方にくれた。
「二人が思いを通わせて恋人同士になって、土曜メンバー一同ホッとしていたのよ、順平先生」
「それは……ありがとうございます」
「でもね、順平先生。貴方、もっと京香ちゃんのことを知るべきよ」
「……それはどういうことですか?」