らぶ・すいっち
「順平、貴方気をつけないと須藤さん、他の男性に靡いてしまうかもよ?」
「は?」
笑顔で言う内容ではないと思う。引き攣った顔をした自覚もあるが、それを土曜メンバーの皆さんに指摘され、ますます顔を歪めた。
「順平先生。今までと同じようにしていたら、確実に京香ちゃんは離れていっちゃうわよ?」
「そうそう。椅子の上でふんぞり返っている様じゃ、破局も時間の問題よ」
「順平先生モテるから、自分から動いて恋愛することなんてなかったんじゃない? ソレじゃあダメよ。なんせ相手が京香ちゃんなんだから」
土曜メンバーの皆さんが指摘するとおり、来るもの拒まず状態だったことは認めよう。そのあとも去る者追わずを貫き通してもいた。
自分から動いて恋愛をする経験は、今回が初めて。どうしたらいいのか戸惑うことも多い。
京を口説くのは、それはそれはかなり大変だった。
口説くという行為自体、今までやったことがない私だ。語録だって持ち合わせていないし、どんなことを言えばいいのかさえも見当がつかなかった。
初めこそはジワジワと伝わればいいと思って、それとなく態度に表したりしてきた。
だが、一向に京は私の気持ちに気がついてくれない。
外野である土曜メンバーの皆さんには、かなり早い時点で気がつかれていたのにもかかわらず、だ。
そのたびに、目の前にいるメンバーたちはこぞって私にダメだしをしてきた。
初めはそれをうるさがった私だが、彼女たちの言っていることは的を得ていると感じてから、アドバイスには耳を傾けるようにしている。
ようやく恋人同士になったというのに、こうして私にダメだしをするということは何か原因があるということか。
私は、キャンキャン騒ぐ土曜メンバーに声をかけた。
「付き合いだしてめでたしめでたし、では終わらないと言う根拠がありそうですね?」
近くにあったスツールに腰をかけると、待ってましたと土曜メンバーの目がキラリと光った。
京がよくこの眼光にやられているのを見ているが、自分も体験することなるとは。思わず苦笑が漏れてしまう。
「ええ、なんて言っても“あの”京香ちゃんなんですからね」
「そうよ。京香ちゃんの鈍さは先生も知っているでしょう? 仕事先ではきびきびしているのに、どうして私生活ではあんなにポワンとしていられるのかしら」