らぶ・すいっち
「ただね。一度だけ乙女な表情をして顔の締まりのない京香ちゃんを見たことがあるらしいの」
「乙女な表情?」
「そうよ、順平先生。その子の言う話ではいつもの京香ちゃんではなくて、乙女オーラバシバシだったというのよね。少し前の話らしいんだけど」
「……」
「一体、誰が京香ちゃんをそんな表情にさせたのかしらね? 気になるわよねぇ、順平先生」
笑って誤魔化したが、気になる。ものすごく気になる。
誰が京をそんな表情にしたというのか。これは一度、本人に確認を取らねばなりませんね。
さてどんな手を使って、京に白状させましょうか。
思わずクツクツと笑いが込み上げてきてしまう。それを慌てて咳払いをして何でもないように装う。
「そんな京香ちゃんなんですからね。順平先生、きちっと縛り付けておかないとどこかにふらふら〜って行っちゃうわよ」
「……ですね」
これはやっぱり同棲話は早めに進めていった方がいいでしょう。
まずは家に帰ったら、京に連絡を取ってみましょうか。いや、それとも明日あたりなんとしてでも会う約束を取り付け、直接尋問したほうがいいかもしれない。
「あら、順平。人相が悪いわよ。ダメよ、須藤さんを苛めたりしちゃ」
「わかっていますよ、お祖母さん」
薄ら笑いを浮かべる私に、土曜メンバーの皆さんはどこか楽しそうだ。
彼女らにとっては、私が京をあれこれ弄って困らせることは予想済みなのだろう。
だからこそニマニマと意味ありげな笑みを浮かべているのだ。
私は思う。この癖のある土曜メンバーの皆さんは最強である。
彼女らにあまりに弄られっぱなしなのは癪に障ったので、最強説を唱えると、一同首を横に振った。
「あら、順平先生の身近にはもっと最強な女が存在するでしょ?」
「最強の女がですか? 皆さん以上の?」
癖がありまくる土曜メンバーのマダムたち。その上をゆく人物なんてなかなか……。