らぶ・すいっち
「京ちゃんにだけ、特別なんですけどね」
「そんな特別嬉しくないです!」
へそを曲げてしまった彼女を見つめるため、私はテーブルに肘を置き、そこに顎を乗せて彼女を一心に見つめる。
最初こそは無視を決め込んでいた京だったが、私の強い視線を感じてジッとしていられなかったのか。チラチラと私を見るようになった。
その仕草は、狼に怯える子羊。怖いくせに気になる。そんな表情の彼女は酷く庇護浴をそそられる。
本当に最近の私はおかしいかもしれない。
須藤京香という女性に、何もかもを狂わされている。
私の変化は周りの人間には勘づかれているというのに、目の前の彼女は微塵も感じていない。
全く鈍感にもほどがあるというものです。
本当は今すぐ、怪しげな会合で得られた情報の件について尋問しようかと思っていたが、それは後でも構わないでしょう。
とりあえず今は、京とのこの穏やかな時間を大事にしたい。
彼女がこの時間を穏やかだと思っているかは……わからないですけどね。
私は、ミルクティーを飲みながら頬を緩ませた。