らぶ・すいっち
「京ちゃん、こんにちは。今日は仕事休みですか?」
「えっと……順平先生、こんにちは。はい、今日は仕事休みなんです」
「そうですか。もしかして疲れてずっと寝ていたとか?」
「え?」
電話の向こうの京の様子がどこかおかしい。動揺しているのが電話越しにもわかる。
怪訝に思いながらも、私は京に話しかけた。
「昨夜メールをしたのですが、仕事から帰ってすぐに眠ってしまったのですか?」
「メール?」
「ええ、届いていませんか?」
「あ、ご、ごめんなさい。さっき起きたばかりで確認していなかったです。あ、それに昨日寝る前にメール出来なくてごめんなさい」
慌てる京に、私はますます眉間の皺を深くする。
「そんなことはいいんです。それより京ちゃん、大丈夫ですか? 体調が悪いんじゃないんですか?」
もし悪いということなら、なにか買い物をして京のアパートに行くというと、突然明るい声で京は笑った。
「大丈夫ですよ! ちょっと疲れちゃってゴロゴロしていただけなんです。心配いりませんよ」
「……」
「本当に大丈夫ですって! 順平先生はお仕事ですか?」
「ああ……はい」
「忙しいでしょうから、そろそろ切りますね。お仕事頑張ってくださいね!」
ありがとう、と返事をすると「では!」といつもどおりに京は電話を切った。
そう、いつもどおりの様子だ。
いつものように私の仕事を心配して、早めに会話を切り上げる。それはいつも京がしていることだ。
だけど、何かがひっかっかる。どこかがおかしい。そんな予感めいたものを感じる。