らぶ・すいっち
後日談 その対決は突然やってきた! 2





「どうしたの? お父さん。突然来るなんてビックリしちゃったよ」


 お父さんを部屋の中に入れ、私はお茶の準備に取りかかる。
 声をかけてはみるものの、やっぱり無口。基本、お父さんは無口で仏頂面が標準装備だから、いつものこととはいえ、こんなふうに一人で私を訪ねてくる自体がまれだ。

 結局そのあとも無言のままで、私は訳が分からずお父さんにお茶を差し出した。
 それに手を伸ばし一口飲んだあと、お父さんは持ってきていた紙袋を私に差し出した。


「え?」
「お前、きちんと食っているか? 母さんに聞いた。この前風邪で倒れたんだってな」
「倒れたって……大げさなんだから。ちょっと熱が出て寝ていただけよ。すぐによくなったし大丈夫」


 なんだかかなり大げさにお父さんの耳に入ったようだ。

 私は苦笑して手をヒラヒラと横に振るが、お父さんは相変わらず仏頂面のまま。
 いや、もっと顔が渋くなったかもしれない。


「お前は昔から料理はダメだったからな……。まともなものを食べていないだろう?」
「た、確かに料理は壊滅的だったけど。これでも私、この頃はまともに料理して食べているよ?」


 お父さんの言うとおり。以前までの私なら、自分が作った料理が不味すぎて———そもそも料理という段階までいっていなかったが————家でまともなものは食べていなかった。
 できたとしても白米を炊き、インスタントの味噌汁を湯で溶かし、生卵と納豆。野菜はレタスをちぎって……そんな食生活だったことは否めない。
 で、主な主菜はデパ地下や、近所のスーパーに頼りっきりだったことも認めよう。

 だがしかし、美馬クッキングスクールに通い出して早一年。

 最初の半年こそ、皿洗い要員だった私だが、今では調理に手を出させてもらうまで成長している。
 それも順平先生の個人レッスンがあったおかげだ。



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