らぶ・すいっち
後日談 その対決は突然やってきた! 4
「撤回してください」
順平先生の厳しい声が聞こえた私は冷蔵庫を閉め、慌ててリビングへとやってきた。
そこには緊迫した空気が漂っていて、私でさえもその中に入ることは許されない、そんなふうに感じる。
立ち尽くしている私を二人は見ていないようで、厳しい視線でお互いを睨み付けている。
一触即発の雰囲気に、私はどうしたらいいのかわからないままだ。
戸惑う私に見向きもせず、順平先生はお父さんに向かってはっきりと言い切った。
「日本料理の職人として技を極め、最高の料理をお客様に提供している須藤さんからみたら、料理研究家という立場は曖昧で職人という立場からはほど遠いと思っていることでしょう」
「……」
「ですが、人間は日々暮らしています。家庭で皆とテーブルを囲み食事を楽しみますよね。京のように一人暮らしをして自炊している人も多いことでしょう。そういう人たちのために食の楽しみ方のアドバイスができたらと思って私は日々料理と向き合っています」
あのお父さんが口を挟まず順平先生の話に耳を傾けている。そのことに驚きを感じた。
頑固者で人の———特に若い人の———意見を聞かないお父さんが黙り聞き入っている。
これは凄いことだ。
呆気にとられている私の耳に、順平先生の厳しい声が飛び込んできた。