らぶ・すいっち
「英子さんが言ったとおりの若造だな」
「お祖母さん……ですか?」
「ふん。英子さんは先代……オヤジの幼なじみで、私も小さい頃からお世話になった人だ。前に英子さんが言っていた。うちの孫は、こうと決めたら二度と考えを曲げない頑固者だからとな」
驚きの事実がお父さんの口から飛び出した。まさか英子先生とおじいちゃんが幼なじみだったなんて。世間は狭いと考えるべきなのか。
どちらにしてもお父さんと順平先生は一度顔を合わせたことがあるということなんだろう。お互い再会してもわからなかったようだけど。
「英子さんの孫だからと言って、京との結婚は認めないぞ」
「それは今現在の須藤さんの気持ち、ですよね。絶対に認めていただきます。それまでは京ちゃんは私が大事にお預かりいたしますので、ご安心を」
「待て! 同棲だって許した覚えは」
「では、私の祖母がいる家でならいいでしょう? 同棲ではなく同居状態になりますから。私としては二人きりがいいですが、京ちゃんの親御さんがそうおっしゃるのならこちらも歩み寄ることにいたします」
なんだか順平先生、もっともなことを言っているように聞こえますが、全然歩み寄っていない気がしますけど。
顔を引き攣らせる私とお父さんに、順平先生は相変わらず攻撃的だ。
「なかなか須藤さんがお許ししてくれないと、京ちゃんは一生結婚できませんよ?」
「そんなの私が決めた相手とさせるから心配いらない!」
「それはさせません。そんなこと私が許すわけがないです。それに娘さんも承諾しないと思いますよ?」
「フン、京も頑固者だからな。親が見つけた相手では首を縦に振らないということか?」
このやりとりに疲れを見せ始めたのは、意外にもお父さんだった。
すごいよ、順平先生。あのお父さんを言い負かしてしまうだなんて。
固唾を飲んで見守る私に、順平先生は優しくほほ笑んだ。
「いいえ。京ちゃんは私以外の男を選ぶはずがないからです」
「っ!」
ね、京ちゃん。と小首を傾げるのはやめてください。
全身真っ赤に染まっちゃいますから、その流し目だけは本当勘弁して。
身悶える私を見て、お父さんは立ち上がって怒鳴った。