らぶ・すいっち
後日談 その対決は突然やってきた! 5
「お父さん、待って!」
アパート裏にある駐車場に走って行くと、車に乗ろうとしているお父さんを見つけた。
私の声を聞き、お父さんは動きを止めた。だが、私を見ようともしない。
「あのね、お父さん」
順平先生のことを許してもらいたい。お弟子さんとは結婚したくない。
きちんと気持ちを伝えなければ、きっとお父さんのことだ。これからもっと抑えるのが大変になる。
私はきちんと自分の考えと気持ちを伝えようとしたが、お父さんに遮られてしまった。
「あの男のことが好きなのか。結婚したいほどに」
しょぼくれたように小さく呟くお父さんの背中は、見たことがないほど小さく見える。
驚く私は言葉を出すことが出来ず、お父さんの背中を見続けるしかできなかった。
ゆっくりと私を振り返るお父さんの瞳が、なんだか寂しげに見えるのは気のせいではないはずだ。
「お前が実家になかなか寄りつかなくなったのは、私のせいだよな」
「お父さん……」
そのとおりである。会えばすぐ二言目には結婚の話。それも弟子と結婚して家を継いで欲しいということばかり。
だから私はなるべく実家を避けていた。そのことにお父さんも気がついていたらしい。