らぶ・すいっち
口実
教室も終わり、いつものようにおば様たちと建物から出ようとした私だったが、順平先生に声をかけられた。
「須藤さん。少しいいですか?」
もちろん私はビックリしてピョコンと飛び上がってしまった。
だが、私よりいち早く反応したのは、周りにいた土曜日コースのおば様たちだ。
「あら、順平先生。うちの京香ちゃんに何か用ですか?」
うちの、と言ってくれるのはとても嬉しいが、どう見ても好奇心旺盛の笑みで聞くのはやめてほしい。
すっかり土曜日コースに溶け込んだ私を見て、順平先生はゆったりと笑った。
「須藤さんはすっかり土曜コースに馴染んできましたね。歳の離れたお姉様方の中で、うまくやっていけるのか心配ではあったのですが」
「あら、大丈夫よ。京香ちゃんは礼儀正しいし。料理がへたくそなだけで」
その言葉を聞いてガックリと項垂れる私に、おば様たちは慰めるようにポンポンと背中を叩いてきた。
「でも、ここのところ凄く頑張ってるわよね。京香ちゃんにお願いしてもいい作業が増えてきたもの」
「ほ、ほ、本当ですか!?」
嬉しくて飛び上がる私に、同じグループのおば様たちが深く頷いてくれた。
ああ、嬉しい。手厳しいおば様たちにそう言ってもらえるということは、本当に少しは進歩したということだ。
「まだまだだけどね。これからみっちり鍛えてあげるから」
「よろしくお願いします!!」
和やかな雰囲気で笑い合う私たちのやりとりを見て、順平先生は頬を緩めた。