らぶ・すいっち
ドキドキとゾクゾク
「確かに細い大根を使いましたが……。これでは菊花だいこんを作れる状態にまでいきませんよ?」
「た、確かに……」
大根の皮を剥く。包丁をうまく使える人なら、なんてことのない作業のひとつだ。
それも料亭の板前がするような、透けてしまうほど薄く皮を剥けとは言われていない。
ごく普通に大根の皮を剥けばいいはずだ。
しかし、私はなんせ料理下手。
包丁をうまく使うなんていう芸当は、いまだ身についてはいない。
そう。菊花だいこんを作る前に、まず初めに私がしなければならないことは、もう少し上手に包丁を扱えるようになることだ。
そうは考えて家でも包丁の練習はするのだが、どれもこれもキレイに切れた試しなどない。
ジャガイモの皮を剥く作業をしていると、どうしてか四角くなっていく。
ジャガイモは基本丸形。それなのに最終的には四角になってしまうのは、これいかに。
私の手にしているのは、小さな小さな白い塊。どう施しても、菊花だいこんにはできそうにもない。
ガックリと項垂れる私を見て、順平先生は深くため息をついた。