らぶ・すいっち
その雑誌には見覚えがある。
この地域の情報等が掲載されている、所謂フリーペーパーというものだ。
グルメ関係やファンションショップ、住宅情報や子育て情報などなど。多岐にわたる情報の宝庫で、私も毎月このフリーペーパーが出ると一冊もらっている。
しかし、そのフリーペーパーと料理教室。なにか関係があるのだろうか。
それは土曜メンバーの面々も同じことを考えているようで、首を傾げている。
順平先生は土曜メンバーの反応を見たあと、フリーペーパーを皆に見えるようにホワイトボードに置いた。
「この冊子は地域の情報誌なんですが、皆さんも街角でよく見かけると思います。で、今度この情報誌で習い事の特集を組むそうです。この地域の料理教室ではうちが一番古く、生徒人数も多いということで依頼をされました」
そこでやっとこの状況を呑みこめむことができた。
そういうことなら、この“美馬クッキングスクール”が取り上げられるのもあり得るだろう。
フムフムと頷く土曜メンバーを見ながら、順平先生は困ったように口を開いた。
「それでですね。雑誌の取材をこの土曜メンバーの方々でお願いできないかと考えています。皆さんの意見をお聞きしたいです」
すると間髪いれず、おば様たちが騒ぎ出した。
「あら、順平先生。どうして土曜教室なんです? その情報誌なら若い子がたくさんいる曜日のほうがいいんじゃないですか?」
手を挙げて質問するおば様の意見に、皆も深く頷いた。