らぶ・すいっち
確かにこの情報誌を手にするのは、十代、二十代の子が多いことだろう。
習い事の特集をするなら、やっぱり独身の若い子向きになると思うのだけど……。
平日の夜コースなら、会社帰りのOLさんも多いと聞いている。
美馬クッキングスクールに入ってもらいたいと思って取材を受けるのなら、若い子がたくさんいますよ的な絵面を用意したほうがいいのではないだろうか。
誰もがそんな疑問を抱いていたようだが、すぐに解決された。
「こちらの出版社たってのお願いでしてね。和気藹々としたアットホームな雰囲気のある様子を取材したいらしいです。一番適任だと思ったのが、この土曜メンバーの皆さんです。英子先生も是非土曜班でということでした。皆さんさえ良かったら、ぜひこの土曜日教室を情報誌に載せてもらいたいと私は考えています」
いかがですか、と順平先生が土曜メンバーに問いかけると歓声があがった。
それが答えだろう。順平先生もどこかホッとした様子だ。
「どうしたの? 順平先生。私たち土曜メンバーが取材の話を断ると思っていたの?」
「いえ。たぶん承諾してくださるとは思っていましたけどね」
苦笑して答える順平先生に、おば様たちはニカッと楽しげに笑う。
「出版社から順平先生で、ってお願いされたんじゃないの? となると、この教室しかないものね」
「まぁ……はい。今回の出版社にはお世話になっているので、こちらとしてもなんとかしたいと思っていましたので助かります」
順平先生は他にも料理関係の仕事をしている。忙しい人だ。
だからこそ、料理教室の講師は土曜日午後だけ。
出版社から順平先生のクラスでとお願いされたのなら、どうしても土曜メンバーに了解を得なければならなかった。そういうことなんだろう。