らぶ・すいっち
同窓会でも行かない限り、会うことはないのだろうなぁと思っていたのだが、こんな場所で9年ぶりの再会をすることになるなんて。
人生どこでどう転ぶのか、わからないものだ。
合田くんに再会したことは、とても懐かしい。楽しかった思い出もよみがえり、ほんわかと嬉しくなる。
しかし、物事にはその裏というものも存在する。そう、黒歴史も一緒に髣髴させてしまうのだ。
黒歴史というものは、自分の心の内にだけにあってほしいものっであって、他人とは共有はしたくないものだろう。
しかし、その黒歴史をともに共有する相手に再会してしまった。
忘れていてくれ、と願うしか他ならない。
だが、私の望みは彼の言葉によって砕け散った。
「高校のとき作ってくれた弁当。あれは衝撃的だったもんな」
「合田くん!!!」
大慌てする私に、合田くんは人の悪い笑みを浮かべる。
「真っ黒焦げなのに、中はどろどろの半生だった卵焼き。あれは忘れられないぞ? 京香」
「う、う、うるさいな! そういうことは胸の内に仕舞っておく物でしょ?」
「あはは。でもあの時の弁当は衝撃的だったけど、弁当を差し出したときの京香の表情は可愛かったな。弁当も嬉しかったぜ?」
「そ、そういうことも胸の内に仕舞っておいてよ!」
「この卵焼き見て思い出したんだから仕方がないだろう? でもまぁ、やっと京香が料理スキルがないことを自覚したことがわかっただけでも、今日は収穫だな」
恥ずかしい。穴があったら入りたい。いや、とりあえずこの場から叫んで逃げ出したい。
確かにあの悲惨な弁当を見て驚いた様子だった合田くんだけど、残さず食べてくれた。
それはとても嬉しかったけど、なんだか申し訳なかった苦い思い出がよみがえる。