らぶ・すいっち




「そんなのやめろよ。フリーなら俺と付き合わない?」

「っ!」


 何を言い出した、この男は。呆気にとられている私に、合田くんは畳みかけるように続けた。

「恋って再熱することがあるって知ってるか? こうして再び出会えたんだから近々デートしようぜ」

 私が答える前に、おば様たちの悲鳴に近い声が上がった。

 待ってください、おば様。悲鳴を上げたいのは私のほうです。
 私の返事を待たずに、合田くんはスマホを取り出した。そして私にもスマホを出せと強引に迫ってくる。


「ちょ、ちょっと待ってよ。合田くん」

「ほら、連絡先教えろよ。渋る理由はないだろう? 高校の同級生なんだから」

「それはそうだけど……」

 でも、先ほどの発言を聞いてしまった今。簡単に連絡先を教えてもいいものかと戸惑ってしまう。
 固まる私に、合田くんは肩を竦めた。

「さっき言ったのは冗談だから、安心して連絡先を教えろよ」

「じょ、冗談!?」
 
 上擦った声を出した私に、合田くんは悪戯が成功したと喜ぶ。

「プッ。京香は相変わらず単純で可愛いやつだな」

「た、単純っていうのは余計だけどっ!!」

 むきになって言い返す私に、合田くんはスマホを持ってせかす。


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