らぶ・すいっち
「須藤さん」
「は、はい……」
「レッスンはお休みだと言いましたが、貴女を帰してあげるとは言っていませんよ?」
「へ……?」
一体それはどういうことなのだろうか。
私と順平先生の間柄といえば、料理においての師弟関係のみだ。
料理関連の用事がない限り、私と順平先生に接点はないと言っても過言ではない。
それなのに、こうして二人きりいなる理由が思い当たらない。
以前に提出した書類の不備があったとか。いやいや、あれは大丈夫だと前に順平先生が言っていたじゃないか。
それなら英子先生に何かプレゼントをしたくて、この前のように私に意見を聞きたいのだろうか。
もしそうなら納得いくが、先月英子先生の誕生日はきたはずだし、私が選んだ口紅をプレゼントしたはずだ。
それなのに何故だろうか。考えれば考えるほど、わからなくなる。
「順平先生は、何か私に用が?」
どれほど考えても分からなければ、本人に聞くしかないだろう。
私は早々と白旗を振り、順平先生の言葉を待った。
順平先生はクスクスと楽しげに笑い出し、壁に手をついていた左手を私の頬に添わした。
思わずビクッと身体が反応した私の顎を、順平先生はそのキレイで長い指で掴んだ。